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2021.09.01

ポストコロナ時代における交通メディアの価値と可能性<後編> 【野村総合研究所×jeki】共同研究結果から考える、新たな交通広告の在り方とは?

コロナ禍のもと、交通メディアは前例のない厳しい状況にあります。そうした中、jekiでは野村総合研究所(以下NRI)と同メディアに関する共同研究を行い、研究結果の一部を2021年6月24日にリリースしました。
共同研究を担当したjekiコミュニケーション・プランニング局の中里 栄悠、彦谷 牧子と、NRIコンサルティング事業本部マーケティングサイエンスコンサルティング部の森田 光一 氏、原野 朱加 氏(以下敬称略)の4名が集い、今回の共同研究について、そして交通広告の今後について語り合いました。

■前編はこちら
■関連記事はこちら:「交通メディアは「バリューリーチメディア」【jeki×野村総合研究所】コロナ禍での共同研究で見えた交通広告“4つの特徴”」

コロナ禍でも交通広告は強いタッチポイント

彦谷:前編でお話した4つの特徴は、プロジェクトが始まるより前からメンバー間の共通の感覚としてありましたが、データとしてしっかり出てきたことは本当に大きかったですよね。
交通メディア・交通広告のユニークな特徴
中里:今回、あえてコロナ禍のデータを使ったのは、ある意味チャレンジでした。交通広告にとってはかなり分の悪い期間のデータだからです。それでも他のメディアに対して優位だったいくつかの点は、交通広告の絶対的な強みととっていいのではないかと考えます。またコロナ禍でも電車に乗っている方々は、不要不急でない必要に迫られた方達が多く含まれています。そうした「エッセンシャルな移動者」の含有率が高い今回の分析は、交通広告のコアなオーディエンスの分析という意味で普遍的なものと捉えるべきと考えています。

彦谷:ワクチン接種が進み移動が戻ってくることが推測される一方で、一部層にはテレワークが浸透しました。電車の利用がコロナ前の水準に完全に戻るかはまだわかりませんが、交通広告のパワーが今回の分析時点よりも悪化することはないのではないかと思っています。


原野 朱加 氏
野村総合研究所 コンサルティング事業本部マーケティングサイエンスコンサルティング部

原野:そうですね。少なくとも利用率の面では、これ以上悪くなることはないと思いますし、テレワークがこれから定着していくであろう世の中を反映するデータとしては、ある意味ベストなタイミングで検証ができたのではないかと思っています。これから不要不急移動も含め移動が戻ってきたとしても、今回得られた特性が失われるわけではないですし、jekiさんが「エッセンシャルな移動者」と呼ぶ層のリーチ率がこれ以上減ることは考えにくいかと思います。

彦谷:今回NRIさんと共同でリリースした4つの特徴は、まったく目新しい発見というわけではなく、そうだよねと思われた方も少なくないかと思います。しかし、何となく感じられていたことがコロナ禍の客観的なデータによって検証できたということに大きな価値があると私たちは考えています。いずれも交通広告の本質をついた重要な特徴ですが、そうしたことが企業に十分に伝わっていないのではないかと普段の業務を通じて感じています。これまでのPR不足も影響しているかもしれませんね。

森田:これで新たな活用法やメディアの価値が再認されれば、広告主の役にも立てるのではないでしょうか。

交通広告は「バリューリーチメディア」

中里:今回の結果に基づき、交通広告のリポジショニングワードを示す言葉として「バリューリーチメディア」というワードを導き出しました。交通広告は、若者やイノベーティブな消費者といったマーケティング価値の高い層にスクリーニングされたボリューム層である「ポテンシャル・マス」にリーチできる。そして強制的な広告視聴が嫌われ避けられる時代に、交通広告は“自主視認”がベースであるために、ブーストもキープも効率的に可能になる。

バリューリーチの対極にあるのはボリュームリーチ。価値観が多様化し、量を至上とする闇雲なリーチが非効率となる中で、価値ある層に価値あるリーチができる交通メディアは企業が情報のパワーゲームから脱し、生活者との良好なつながりを生み出していく上で有用なメディアになるのではないでしょうか。

原野:今回のプロジェクトで改めて交通広告にはまだ大きなポテンシャルがあると感じました。もちろん全ての商材の全ての状況を単体で解決できるというわけではないですが、jekiさんが「ポテンシャル・マス」と呼ぶ若年層、働いている方、一定収入のある方と相性のいい商材には交通広告が非常に有効だと思っています。これらの属性をターゲットとしている商材なら交通広告を使ってみようという風にマーケターの皆さんの選択肢に上がる一助になれば嬉しいです。

森田 光一 氏
野村総合研究所 コンサルティング事業本部マーケティングサイエンスコンサルティング部
主任コンサルタント

森田:メディアのリーチと広告配信のリーチ、広告認知で整理して、各メディアの広告を評価するべきだと思っています。たとえば、YouTubeはメディア利用率が高く、メディアのリーチ力は高いと言えますが、広告配信の際には、imp数に応じるので、メディアのリーチ力をフルに使い切れることは少ないと思います。交通広告は首都圏全線セットなど、メディアのリーチに広告配信のリーチを近づけることがそこまで難しくないメディアと言えます。広告のリーチまでは稼ぎやすく、後は広告認知さえ高められれば大きな伸びしろのあるメディアと言えますので、今後のカギは、OOHクリエイティブの発展にあると思います。

彦谷:リーチに加え、いかに覚えてもらえるか、インパクトを作れるか、という観点が重要ですよね。特にクリエイティブについてはOOHだからこそできることがもっとあると思います。

森田:海外では空間ごと全部デザインするような展開がよくみられますよね。そういった展開や、印象をバチっと残せれば配信までのリーチはとてもコスパがいいので、すごくハネる可能性があると思うんです。そういうポテンシャルの可能性を広告主がもっとわかってくれたら。クリエイティブの領域って結局一番頑張れるところだと思っているので、広告主側も。

中里:仰る通り、海外のOOHはとてもクリエイティブで魅力的です。日本のOOHももっと人の目をひきつけるものを目指していきたいですね。リーチやフリークエンシーが稼げても、クリエイティブがうまくいっていないと態度変容や行動にはつながらない。クリエイティブのレベルアップが交通広告の大きな課題であることは間違いありません。
交通広告は他のメディアとは明らかに異なるメディアです。第一に視聴環境が明らかに異なる。音声がないという弱点もある。「自主視認性」は言い換えれば生活者にスルーされる可能性があるということ。ここはもっと真剣に考えていくべきだと思います。交通広告のクリエイティブが底上げされるようなことがあればもっとパワフルなメディアになると思います。

森田:海外のOOHクリエイティブってすごくインパクトありますよね。デジタルは確かに最先端ではありますが、スマホの小さな画面で作れるインパクトはどうしても限界があります。

中里 栄悠
Move Design Lab プロジェクトリーダー/シニア ストラテジック プランナー

中里:体験価値を生み出せるのはOOHならではだと思います。体験を狙ったOOHならではのクリエイティブで、他にはない強い認知やインパクトをもっと生み出せるはずです。
コロナに関係なく交通広告が直面する問題に、電車内でスマホをみている生活者の存在がありますが、彼らの視線を奪い魅了するクリエイティブを戦略的に創造していくことは今後確実に必要になります。

原野:今回の研究が追い風になればいいなと思います。リーチ力があってこういう使い方ができるんだったらいいクリエイティブを作ってみようと、マーケターやクリエイティブの人達が思ってくれるといいですよね。

中里:今も統合コミュニケーションの視点からクリエイティブは考えられることが多く、テレビCMを中心に、他のメディアでリマインドさせていくという考え方がベースにあり、その中のひとつにOOHも組み込まれています。ただ、タッチポイント毎にクリエイティブを変える試みが最近様々な企業で増えてきているように感じています。

森田:1つのクリエイティブで回すほうが楽だよねということが少し前まであったと思うんです。テレビの素材をYouTubeで回したりという時代があった気がするんですが、何度かやるとそれはベストではないということがわかってきて、我々からも分析結果として、当然使い回しとしては効果が低くて、それぞれ最適化すると効果がより高くなるよ、という発表をすることが増えています。

彦谷:かける時間とお金、両方の意味でのコスト意識がはたらいている。平たく言えば面倒というのと、せっかくお金をかけて作ったクリエイティブをいろんなメディアで使いたいと思うのは自然のことだとも思います。一方でメディアごとに最適化した方が結果的にコスト以上の効果を出せることは十分あり得るのではないかと思います。

これからは“バズるOOH”

中里:さて、今回の研究では他のメディアと比較をする意図でリーチ&フリークエンシーの話が中心になりましたが、交通広告独自の価値から考えると今回と異なる方向性もあるかと思います。特にバズ効果は今後注目ですよね。たとえば最近で言うと渋谷で展開した「呪術廻戦」のOOHがSNSでバズって認知が広がったということがありました。たった一枚のポスターが話題となり、ネット上で拡散されるケースもよく見られます。これらはOOHがきっかけとなって生活者によって自発的に広げられた二次的なリーチです。
シェアされる力のあるOOHを「シェアラブルOOH」と勝手に呼んでいますが、“バズるOOH”の可能性はとても大きい。

森田:クライアントもそうしたことに結構期待しているように思いますね。関係性の説明はまだ難しいかなと思いつつ、研究として今後トライしていきたいと思っています。まずは、どうやってデータを観測するかについて検討し始めているところです。

原野:バズは広告主の関心が間違いなく高い要素の一つだと思います。ソーシャルリスニングのツールが普及し、日常的にチェックしている広告主は増えている印象です。

中里:同じクリエイティブでもテレビで流れるのとOOHで流れるのでは、後者の方が写真を撮って拡散するモチベーションは高いのではないかという感覚はあります。OOHのバズ効果については以前より指摘されていますが、それをデータで検証していくことが必要だと思っています。
さて今回は交通広告の“4つの特徴”としてリリースしましたが、交通広告には他のメディアにはない特徴が他にもたくさんあり、その特徴があるからこそ生み出せる効果があると考えています。それを感覚でなくデータなどで見える化していくことで、ブランドが抱える様々な課題の解決手段として交通広告がもっと貢献できるのではないかと思います。

彦谷 牧子
Move Design Lab データアナリスト/ シニア ストラテジック プランナー

彦谷:コロナ禍で交通広告に対してネガティブな印象を持っている方も少なくないと思うのですが、今回の研究で改めて交通広告は可能性を秘めたメディアだと感じました。交通広告もデジタル化が進行し、使い方や表現できることがどんどん増えていくと思うので、そこを上手く活用して可能性を広げていきたいですね。

原野:今回明らかになった価値は、使い方や表現でさらに加速していく可能性のある内容だったと思います。今回の発表が交通広告でもっとチャレンジングなコミュニケーションをやってみようと思うきっかけになれば嬉しいです。

森田:この研究をきっかけにより高度な交通広告の活用へとつながれば幸いです。

中里:コロナという大きなショックをギアチェンジの機会に変えられるといいですね。
交通広告はデジタル化でこれから大きく変貌していきますが、交通にしかできないことについて考え続けていきたいと思います。
本日はありがとうございました。

ポストコロナ時代における交通メディアの価値と可能性<前編>【野村総合研究所×jeki】共同研究にみる、交通広告の「4つの特徴」とは?

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ライター ジェイアール東日本企画 恵比寿発、

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